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更新2023/11/04
バイポーラトランジスターと構造が異なるFETというトランジスターがあります。
バイポーラトランジスターが電流を増幅する素子なのに対し、FETは電圧で抵抗値を制御して結果的に電流を制御するというトランジスターです。
本章では、MOS型FETについて簡単に説明します。
バイポーラトランジスタと同じように、「N型」と「P型」に分けられます。
更に、FETは、「接合型」と「MOS型」に分かれます。
現在、接合型は特殊な用途以外では使われておらず、扱いやすいMOS型が多く使われます。
MOS型FETの3つの端子は、「ソース S」、「ゲート G」、「ドレイン D」と呼ばれています。
ゲートに電圧を加えることで、ドレイン・ソース間の抵抗値を変化させ、結果的にドレイン電流を制御します。
昔の3極真空管と同じです。
また、バイポーラトランジスタと異なり、ゲートは酸化膜で絶縁されているため、殆どゲート電流が流れないという特徴があります。
ゲートに印加する電圧は、ソースを基準として、N型は「+」の電圧、P型は「-」を加えると、ドレイン・ソース間の抵抗が下がりドレイン電流が流れます。
N型とP型は、電圧と電流の極性が違うだけでMOS FETとしての特性は同じです。
MOS FETのゲート電極は、絶縁されているので、静電気などの過電圧に大変弱い構造になっています。
静電気が加わらないように、または静電気が加わっても最大定格を超えないように回路を設計・注意する必要があります。
日本では、バイポーラトランジスターと同じく型名の頭に次の3文字の英数字が使われていました。
2SJ:P型FET
2SK:N型FET
最近は、バイポーラトランジスターと同じく目安程度となっています。
MOS FETは、ゲート電圧 VGS によってドレイン電流 IDを制御します。
ドレイン電流とゲート・ソース間電圧の関係は、下図 のようになります。
上記は、大電流用MOS FETの例です。
他のデバイスと同じく、大きく分けてリードタイプと表面実装(チップ)タイプの2種類です。
MOS FETの各特性の中で、重要と思うものを挙げます。
・絶対最大定格
絶対最大定格は、どんな場合でも一瞬でも超えてはいけないとされています。
このため、最悪条件でも超えないように余裕をもって回路設計・使用しなければなりません。
ドレイン・ソース間電圧 VDSS
ドレイン電流 ID
ゲート電圧 VGSS
ドレイン損失 PD
チャネル温度 Tch
保存温度 Tstg
絶対最大定格は、周囲温度により変化するため、設計で考慮が必要です。
・オン抵抗 RDS(ON)
MOS FETを飽和領域にした場合の、ドレイン・ソース間抵抗値です。
大電流用MOS FETなどは、普通100mΩ以下です。
FETの使い方も、バイポーラトランジスタの場合と同じです。
上記回路は、FETの使い方の中でも最もポピュラーなソース接地という回路です。
VGSに、マイクやセンサー信号など、微小信号電圧を印加することで、RDの電流信号を変化させます。
このRD(負荷)は、バイポーラトランジスタと同じく、抵抗・LED・リレーコイル・スピーカーなどがあります。
FETにも、大きく分けて3つの動作領域があります。
・第1の領域(カットオフ領域)
ゲートソース電圧が低くドレイン電流が流れていない領域です。
・第2の領域(能動領域)
第1の状態からゲートソース間電圧を増加させると、ドレイン電流がそれに応じて増加して行くようになる領域です。
・第3の領域(飽和領域)
第2の状態からゲートソース間電圧を更に増加し続けると、ゲートソース間電圧を大きくしてもドレイン電流が増加しない現象が起きる領域です。
これら3領域は使われる用途が異なり、バイポーラトランジスタと同じく、能動領域はオーディオ信号などアナログ信号の増幅回路に使われます。
カットオフ領域と飽和領域は、電子スイッチングやデジタル回路に使います。
尚、実際にはMOS FETはアナログ信号で使うことはほとんどありません。
スイッチング回路として使用されることがほとんどです。
MOS FETも使い方はバイポーラトランジスターと同じなので、当然ですがドレイン電流を流せば、電力を消費します。
消費電力量 PD = VDS×ID
ドレインで消費する電力は、全て熱になるので、大きな電流が流れる場合は焼けつくなどの問題が起きやすくなります。
放熱には、十分注意が必要です。
MOS FETの許容できるドレイン損失値は、MOS FETの放熱や周囲温度によって異なります。
バイポーラトランジスターと同じく、周囲温度が25℃を超えると、許容損失はどんどん小さくなっていき、150℃ではゼロになります。
熱を放熱器などで逃がすことで、許容できる損失を大きくすることができます。