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更新2022/06/14
本章では、オペアンプを使用するうえで注意しなければならない同相入力電圧範囲について簡単に説明します。
オペアンプの入力端子に印加できる電圧は、絶対最大定格で決まる電圧以外に、同相入力電圧範囲VICMと呼ぶ制限があります。
最大定格は、その定格値までは壊れないが一瞬でも超えたら永続的なダメージをICが受けるというもので、オペアンプとしての正常動作を保証するという意味ではありません。
正常動作を保証する規格は別にあり、その一つが同相入力電圧範囲VICMというものです。
同相入力電圧範囲は、オペアンプの仕様書に「同相入力電圧範囲」や「Input Voltage Range」等の文言で表示されています。
例えば、汎用オペアンプの代表的なICである358系の一つLM358では、以下のように規定しています。
(条件)VCC=+5V、VEE=0V、25℃
同相入力電圧範囲VICM : 最小0V~最大3.5V
上記を見ると、入力電圧の下限は0V、上限は3.5Vであり、上限はVCCの5Vまで使用できないことがわかります。
この同相入力電圧範囲は、オペアンプ内部回路の種類によって変わります。
PNP Tr入力系オペアンプ(358系)の例 → VEE~VCC-1.5V
FET入力系オペアンプの例 → VSS+3V~VDD
CMOS系オペアンプの例 → VSS~VDD
上記にある電源の記号VCCなどは、オペアンプの製法によりVDDになったりと、呼び方が変わります。
慣習みたいなものなので、電源のことと思っていればOKです。
では、同相入力電圧範囲を超えた電圧を印加した場合はどうなるでしょうか。
ほとんど場合、オペアンプは増幅動作をしません。
例えば、以下のように358系のオペアンプで非反転増幅器の場合。
VCC=+5V、VEE=0V
仕様書上の同相入力電圧範囲:0V~3.5V
設定した増幅率:+1倍
Eiを0Vから+電源電圧の5Vまで上げていきます。
その場合の入力電圧Eiと出力電圧Eoのグラフは以下となります。
増幅率1倍なので、出力電圧は入力電圧に比例して0Vから上がっていきますが、同相入力電圧範囲の3.5Vを超えると、入力電圧に関係なく出力電圧は最大値に張り付いたままになります。
このように、同相入力範囲外の電圧を印加すると、オペアンプは異常を起こしてしまいます。
オペアンプを使用する時は、入力電圧が同相入力電圧範囲内に必ず入るよう回路を調整する必要があります。
オペアンプを使い始めて日が浅い新人エンジニアの時に、この同相入力電圧範囲の罠に思いっきりはまったことがありました。(遠い目)
入力電圧はきちんと電源電圧内で問題ないはずなのに、何をしても出力が振り切ってしまい、理由がわからずしばらく悩んだことがあります。
現実の部品と教科書的な理想理論の違いを肌で感じた貴重な経験でした。