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更新2023/11/07

電子工作が動作しない理由

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電子工作に限らず、本人にすれば困る問題No.1の「作動しない・動かない」です。

初心者の電子工作にしろ、企業プロエンジニアにしろ、「あれ?」という瞬間を皆さんは何度も経験していると思います。
「説明書通りに組み立てたのに動かない」「昨日まで動いていたのに今日は動かない」
数え上げればいくらでも、そういう場面はあるのではないでしょうか。
本章では、よくある「作動しない・動かない」の原因に重点をあててみたいと思います。

説明書通りに作ったのに動かない!

まずは、お約束のトラブルです。
この作動しない・動かないは、電子工作キットなどを、「さぁ作ったぞ。動かしてみよう」と期待に胸ふくらませて?電源を投入。
しかし、待てど暮らせどウンともスンとも言わないという、きわめてガッカリな問題です。

 ・説明書通りに配線したのに動かない
 ・キットの部品表と実体配線図を見て半田付けしたのに動かない

いくら配線を見直しても、いくら部品をにらんでもどうにもならない。
最後は「最初から壊れていたのではないか」「メーカーの説明書がおかしいのでは?」と他人のせいにしたくなります。
稀に、本当にメーカーが悪いというか説明不足なこともありますが、自分が作った電子工作品が動作しない原因は、ほとんどのケースで自分にあります(当人には受け入れがたいですが)。

まずは、上手くいかなくて沸騰している頭を冷やしましょう。
そして、ちょっと量が多いですけど、このページを最後までじっくりと読んでください。
ヒントがあるはずです。(なかったらゴメンね)
うまくトラブルシューティングできることを祈ってます。

半田付け不良

電子工作などの自分で組み立てるキット品は、ある程度の手半田付け技量が必要です。
もし、半田付けの訓練をしないでいきなりキット品に挑戦という場合は、ほぼ100%失敗します。
手半田付けというのは簡単そうに見えますが、実はかなり難しい部類の技能にはいるため、経験の浅い方が半田付けをすると、部品がしっかりと基板パターンに溶着されていないや、熱を部品にかけすぎて部品が劣化してしまっているなどの問題をよく起こしてしまいます。

中には、見ただけではわからない、中上級者でも起こしてしまう半田付け不良もあります。
一例として、下の写真は多少形がいびつですがしっかりと半田付けされているように見えます。
半田付けオープン不良の写真
実は、この写真はオープン不良と呼ぶ半田付け不良の写真です。
見かけ上は、半田が基板のパターンとしっかり溶着・導通しているように見えますが、テスターで測ると絶縁状態となっています。
これは、この部分の基板パターンが広く熱が逃げやすいため、半田こての熱が逃げてしまい半田を十分溶かす温度まで上がっていないことが原因です。
そのため、半田が端子と基板にしっかり溶着していないや、不純物がパターンと半田間に残ってしまい、非導通もしくは半導通などの状態となっているものです。
この不良は、広いパターン、コネクタや太い電線を使ったときなど、半田する部分の温度が上がりにくい・逃げやすい場合に頻繁に起こります。
また、基板パターンや部品の端子の金属が酸化して黒ずんでいるような場合も、熱が伝わりにくいので同様です。
こういう一見うまくいっているかのような半田付けは、ぱっと見では問題がないようにみえるため、よく見過ごされてしまいます。
半田付け不良は、理由のわからない作動不良の、大きな原因の一つです。
参考:電子工作の基本:手半田付けは高等技能

配線間違いと二次不良

半田付け不良と双璧をなす不具合の大きな原因の一つが配線間違いです。
仕様書に沿って配線されていないものが正常に動作するはずもないので当たり前といえば当たり前のことなのですが、知識経験によって差はあるものの、かなりの頻度でこの配線間違いを起こします。
気を付けているつもりでも、仕様書の解釈・知識不足やうっかりミスなどで案外間違えるものです。

また、困ったことに配線間違いが、別の作動不良の原因を作ってしまうこともあります。
それは、配線ミスに気づかずに電源を入れた場合によく起きます。

配線ミスしたまま電源を投入すると、機器によっては内部回路の発熱・発火・発煙・破壊・損傷や劣化をおこしてしまうことがあります。
例えば、電源の+と-を間違えた(電池をセットする向きを間違えたも含む)など、電源系の配線を間違えて配線すると発熱や内部回路の永久的な損傷などを起こす確率が高くなります。
配線間違いが原因の二次不良発生が起こる多くのケースは以下のようなものです。

 ①電子キットや基板系のモジュールなどを配線する
 ②不十分な見直し後、電源を投入する
 ③作動しない、発熱するなどの問題が起こり、慌てて電源をオフにする(この段階で永続的な損傷が内部に発生)
 ④配線ミスを発見し修正する。またはミスを発見できない
 ⑤再度電源を投入するが、すでに内部回路が損傷しており正常作動しない
 ⑥もともと壊れていたのでは? と考える

配線間違いは、何度も見直せば間違いを見つけることが可能なので、作りっぱなしにせず仕様書と同じなのかどうか配線を見直す癖をつけましょう。

使用環境

何事にも仕様というか、使用できる範囲というものが決まっています。
温度などは、その最たるもので0~40度Cまでしか使えないものもあれば、-40~+120度Cまで使えるものもあります。
たとえば、仕様上0~40度C範囲内ならば正常に作動するものを、真夏の窓を閉め切った車の中で作動させようというのは無理があります。
これは、使う電子部品や装置の仕様をよく理解しないで(気にしないで)使用すると起きやすい問題です。
他には、適正な電源電圧を印加していない、十分な電流容量を持った電源を使っていないというような使用する上での基本的な環境も含みます。

静電気による破壊

冬だけでなく夏でも湿度の低い時に、静電気は起こりやすくなります。
そういう時に、絨毯の上を歩く、パチパチしやすい服を着ていると、体に静電気が貯まりやすくなります。
その状態で、電子部品や電線に触ると体の静電気が端子等から内部に入り込んで、電子工作品の電子部品を破壊または劣化させることが多くあります。
昨日まで動いていたのに、今日は動かなくなったという場合は、静電気破壊が原因のことがあります。
このページを見に来た人にとっては、既に遅いかもしれませんが、電子工作するときは静電気が発生・貯めやすい服装(パチパチ服)や場所は避け、工作を始める前に体の静電気を一度逃がすようにしましょう。
プロの現場では、作業するときはアースした導電マット・導電リストバンド・イオナイザー・アンチ静電気服等で対策をしています。

保管環境による部品劣化

これは、流通経路も含めての原因です。
電子部品は、金属や特殊な材料を多数使っています。
そのため、保管が高温・低温・多湿・紫外線などで劣悪だと、その金属部分が錆びたり、部品性能が劣化します。
生産してから年単位で倉庫に置かれていたり、同じく入手してから半年・1年と放置していた部品などは、端子や基板パターンなどに錆が浮いていることがあります。
そのような部品は、半田付けがうまくいかず、接触不良など不具合の原因となります。

設計不良

既製品やキット品を組み立てる場合とは違い、自分で設計した電子工作品や試作品が作動しない場合の原因は、設計不良がかなりの比率(5~9割ぐらい?)を占めます。
設計不良の根本は、回路や部品に対する知識不足・理解不足です。
作動しない部分を重点的に調べることで、何が不足なのかを把握し対応するしかありません。

思い込み・勘違い

これは思ったより多いのです。
初心者は当たり前として、多少なりとも腕に覚えのある中上級者方も陥りやすい原因です。
思い込みというのは恐ろしいもので、「何度も見直したから配線は絶対まちがいない」「今までこうだったから今回も同じはず」「リボンケーブルだから色はこの順番のはず」「フォトトランジスタは見た目LEDと同じだから極性もおなじだろう」などと、思い込む要素には事欠きません。
多そうなのは、以下のようなものでしょうか。

 ・順番や数え間違い(コネクタの1番端子間違いや端子の番号振り分け等々)
 ・色(リボンケーブルの色等々)
 ・極性(電池、電源、ダイオード、LED、IC等々)を間違える
 ・自分が配線を間違えているはずがないと思う(何度も配線チェックをした)
 ・きちんと半田付けした(ように見える)
 ・仕様書や説明書内容の読み間違い・勘違い

パッと見ると初心者が起こしそうな間違いばかりですね。
しかし、こういう間違いは、実は何も知らない初心者より、それなりの経験を持つ方にも発生します。
過去の経験や自分の腕に自信を持つことは、問題解決に役立つことが多いのですが、それが思い込みとなってしまうと正しい判断や正しい確認ができなくなってしまいます。

理由は1つだけ

さて、作動しない原因の主なものを色々と記載しました。
他にも色々ありますが、外力で壊れていないのであれば、動かない理由はただ一つです。

  想定された仕様の範囲内で組み立て・使っていない

本当に正しい組立・使い方なのかをよく確認しましょう。

配線ミスも直した、半田付けもやり直したが、どうしてもうまくいかない・わからないという時もあります。
そういう時は、既に内部が壊れているか、触りすぎて物理的に破損している可能性が高いです。
あきらめて新しいものに交換したら、すんなりと動いたという話しも良く聞きます。
悔しいことではありますが、どうにもならない時はそれも一つの方法です。
いちかばちかで、懐にも痛いですけど。

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電子回路とファームウェア専門の元エンジニアが、初心者の頃の疑問や勉強・経験で知った「そうだったのか」を2009年から書いています。

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