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更新2023/11/04

インピーダンス

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インピーダンスは電子回路や電気回路などで良く耳にする用語ですが、何を指すのかよくわからないという方も多いと思います。
本章では、電子工学でいうインピーダンスの簡単な説明をします。

インピーダンスは抵抗の総称

インピーダンスは、おおざっぱに言えば受動素子の抵抗のことです。
抵抗器の抵抗値・コイルの抵抗値・コンデンサの抵抗値自身、及びそれらの合成値を指します。
ただし、単純な抵抗器と異なり、コイルとコンデンサの抵抗値は電圧や電流の周波数で変化し、コイルとコンデンサでは電圧と電流の位相が真反対にずれているため、合成抵抗値は単純な足し算引き算とはなりません。

インピーダンスの計算手法

そのようなよくわからない複雑珍妙怪奇なインピーダンスを簡便に計算する方法として、電気工学では複素数表現という数学手法を使います。
複素数表現は、実数+虚数で表し、位相のある値を表現するのに適した数学的な手法です。
普通に考えれば、回路のコイルやコンデンサの電圧電流を微分方程式で表し、微分方程式の解を求めるということになりますが、回路構成が複雑になればなるほど解は簡単には求まりません。
回路要素が数ケ程度であれば解くこともできますが、10ケ20ケとなると事実上不可能です。
複素数表現で計算すると、微分方程式を解くようなこともなく簡単にインピーダンス計算ができます。
つまり、電卓やそろばんのような便利な計算ツールとして複素数表現を使います。

それぞれの要素の複素数表現

抵抗は実数、コイルとコンデンサは虚数に相当します。
尚、複素数表現の虚数部分は数学では「i」で表示しますが、電気工学では電流の「i」と紛らわしいので「j」を使います。
各受動素子の複素数表現は以下の通りです。

素子複素数表現単位
抵抗器Ω
コイルjωLΩ
コンデンサー-j/(ωC)Ω
ω=2πf  (π:パイ3.14 f:印加電圧の周波数Hz)

(例)RLC直列回路のインピーダンス

RLC直列回路図
上記のような抵抗器(R)、コイル(L)、コンデンサー(C)の直列回路のAB間のインピーダンスは以下のように表現します。
 AB間インピーダンス = R+jωL-j/ωC=R+j(ωL-1/(ωC))
直列なので、単純に抵抗器の直列接続と同じく各素子の足し算です。

例えば、R=1Ω、L=2H、C=3F、f=0.1Hzとすると
 0.1Hz時AB間インピーダンス=1+j(2×3.14×0.1×2-1/(2×3.14×0.1×3))=1+j(1.256-1/1.884)=1+0.7252j(Ω)
となります。

(例)RLC並列回路のインピーダンス

RLC並列回路図
上記並列回路のインピーダンスは、抵抗器の並列計算と同じように、各素子の逆数を足し算し、更にその逆数となります。
 AB間インピーダンス = 1/(1/R+1/jωL+(1/(-j/(ωC))))=1/(1/R+j(ωC-1/(ωL)))
逆数ばかりで大変分かり難くいのですが、抵抗器の並列接続と同じ計算だということを理解していれば他の構成にも応用できます。

RLC直列回路や並列回路の虚数部がゼロになる周波数は、「同調周波数」「共振周波数」といいます。
直列の場合は、インピーダンスが最も低くなる周波数であり、並列の場合は最も高くなる周波数です。
これらは、そのインピーダンスの変化を利用して、ラジオなど選局のための同調回路として使われます。

インピーダンスの絶対値

時には、複素数ではなく、絶対値はいくらなの?ということも現場では必要になります。
算出方法は以下の通りです。
インピーダンスの絶対値計算式
虚数部分はj以外の部分です。

電子回路の現場で、インピーダンスはどのような使われ方をしているのでしょうか。
実は、上述のように「実数+虚数の複素数表現」で使うことはあまりありません。
だいたいは、プロでも「1kHzから上の入力インピーダンスがxxΩで低すぎる」とか、「この駆動回路の出力インピーダンスはxxxΩ」などと、絶対値でいう事がほとんどです。
要は、抵抗の総称として使います。
電子工作であれば、インピーダンスは「周波数で変化する抵抗」という理解で十分です。
ただし、高周波回路の設計・高周波計測・分布定数回路などの高い周波数の設計では、きっちりと複素数表現や類するチャートなどを使います。

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電子回路とファームウェア専門の元エンジニアが、初心者の頃の疑問や勉強・経験で知った「そうだったのか」を2009年から書いています。

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