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更新2022/06/11

入力オフセット電圧と補正

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オペアンプの特性に起因する誤差要因の代表的な1つとして、入力オフセット電圧があります。
微小信号を扱う場合は無視できなくなる場合があります。
本章では、入力オフセット電圧の出力への影響と、補正について簡単に説明します。

入力オフセット電圧の出力への影響

反転増幅器を例にして説明します。
入力オフセット電圧 Vio を回路図と計算式で表すと下記のようになります。
オペアンプの入力オフセット回路図
オペアンプの入力オフセット計算式
つまり、入力オフセット電圧Vioは、「1+R2/R1」倍で出力に表れます。
入力電圧に、オペアンプの入力オフセット電圧が、ほぼ加算されることと同義となります。
このことは、非反転増幅器や差動増幅器にも同じことが言えます。
汎用オペアンプの場合、入力オフセット電圧は±2mV~±7mVあるため、増幅率を大きくする数百mV 以下の入力信号を扱う場合は、入力オフセット電圧の影響を無視できなくなります。

両電源での入力オフセット電圧の補正

では、入力オフセット電圧はどのように補正すればよいでしょうか。
古いオペアンプには、補正端子が付いているものもありましたが、最近では殆どないため、外部回路で補正することになります。
補正方法は、「+」と「-」の電源がある両電源タイプと、「+」電源しかない単電源タイプでは少し違ってきますが、ここでは両電源タイプの場合について説明します。
オペアンプの入力オフセット補正回路1
両電源タイプの補正方法は、外部から入力オフセット電圧 Vio と逆の電圧 Vs を加えて Vi が「0」になるようにします。
入力オフセット電圧には個体差があり、しかも「±」があるため、Vs を可変にしてEi=0Vの時に、Eo=0Vとなるように調整する必要があります。

補正回路例
補正回路の事例です。
オペアンプの入力オフセット補正回路2
Vs1 及び Vs2 は入力オフセット電圧の最大値の 1.5 倍程度に設定します。
例えば、最大値が ±7mVの場合は 10mV程度にします。
あまり大きくすると調整がやりにくくなります。
また、Rs は R4 + R5 の値より1桁以上大きい値にします。
そして、補正回路を設計する場合は必ず基準点(この場合はグランド)に接続して下さい。

ダメな補正回路例
尚、回路が簡単だからと言って 下記回路の様にしてしまうと、電源電圧の変動をまともに受けて正常に動作しなくなる恐れがあります。
オペアンプの入力オフセット補正回路3

単電源での入力オフセット電圧の補正

オペアンプ出力をマイコンのAD入力に接続する場合は、普通マイコンが単電源なので、ほとんどの場合オペアンプも単電源が使われます。
しかし、電源が単一なので、入力オフセット電圧と逆の電圧を加えて補正する両電源のような方法はできません。

そこで、オペアンプ部分ではなく、オペアンプ出力後で補正する方法を取ります。
例えば、マイコンのAD入力に接続する場合、信号電圧を検出する期間と入力オフセット電圧を検出する期間を設けます。
信号電圧には入力オフセット電圧を含んでいるので、別に検出した入力オフセット電圧分を差し引いて正しい入力電圧に補正します。

一例として、差動増幅器の入力オフセット検出回路を下記に示します。
オペアンプの単電源での入力オフセット補正回路図
CMOSアナログスイッチ4066で、無信号(GND側)と信号入力受付を切り替えます。
無信号側に切り替えて、その時の出力電圧Eをオフセット電圧としてマイコンに記憶させます。

次に、スイッチを信号受付側に切り替えて、通常の信号を受け付けるようにし、通常信号の出力電圧Eから先ほどのオフセット電圧分をマイコンのプログラム処理で差し引けば補正完了です。
スイッチの切替は、マイコンで制御します。

尚、単電源型のオペアンプの場合は、下限目いっぱいでも飽和出力電圧0.5V程度が残るので、Vs は飽和電圧を考慮して設定します。
また、R7は差動増幅器の抵抗のバランスを維持するためのもので、R5 と R6 を並列合成した値に設定します。

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電子回路とファームウェア専門の元エンジニアが、初心者の頃の疑問や勉強・経験で知った「そうだったのか」を2009年から書いています。

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